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失いし者たち 4話

新しい修正:タイトルの数字が全角から半角数字になりました_(:3」∠)_


まあ、Bパートというべきものですか、続いております。今回遅くなったのは文字数増やすためではなくて、流れを考えていたためですね_(:3」∠)_

だからボリュームはそこまで無いです。(というより、ボリューム増やすほど話が濃くなかった)

そしてプロット(もどき)をだいぶ書き換えました_(:3」∠)_ (ワイルドなお話からマイルド化しました)


今年中は更新できないとか言ってましたが、普通に書ける回だったというのは自分でも驚きです_(:3」∠)_


そんなこんなで、4話始まります。本編は追記展開でどうぞ。




「チェスカさん、追っ手の様子はどうでしょうか?」
「・・・ダメです。こちらの場所がばれているようです。」
「そうですか・・・仕方ありません。もう少し距離を置いたら対策を考えましょう。」

フィルとチェスカは、追っ手をどうやって撒くか、ルートはどうするかなどと考えているようだった。

「おーい、どっちへ行くんだー?」
「太陽がある方よ、兄さん。」
「湖が見えるはずです。」
「えーと・・・おお、湖が見える。じゃああっちだな。」

ユニはしっかりとチェスカの言葉通りの方角を指さしながら確認した。

「では、移動しましょうか。」

三匹はフィルを先頭に、ユニ、チェスカの順番で縦に並びながら走り始めた。
三匹とも余裕な表情を見せていたが、内心焦らずにいたのは1匹もいない。中でも、ユニは大きく動揺していた。奴隷身分から解放された喜びとは裏腹に、そのあとのことを考え始めた途端に不安が押し寄せていた。自分はこれからどのように生きて行けばよいのか。何を糧にすればよいのか。何をすればいいのか・・・考え始めると、どんどん気が滅入っていくのだった。
そんな心境を、兄妹の妹であるチェスカは察していた。しかし、この状況に逆に安心していた。これが本来の兄だ、という妙な安心感があった。数日前に見た兄の姿は、まるで何かに憑りつかれていたように見えていた。そんな状態の兄を心配させまいと、自らは冷静に行動するように心がけていた。

「ユニさん、あとだいたいどれくらいで到着するか目算できますか?」
「えーっと・・・このスピードなら10分もかからないぞ。」
「なるほど・・・わかりました。ありがとうございます。」

フィルは丁寧な言葉で応対した。もともと紳士のような雰囲気で接していたためか、ユニ、チェスカは、共に気に留めていなかったが、フィルの態度は若干ではあるが不自然な態度にも感じられる部分もあった。下手に出過ぎていたり、態度があまりにも丁寧すぎていたりして、機械のような言葉に感じる部分もあった。
もちろん、二匹ともフィルに対する警戒は怠ってはいなかった。突然現れた、見知らぬ小さなドラゴンが、突然自分たちを解放し、突然逃げろだなんて言いだすのなら、自分たちを罠に陥れようとする向こう側の回し者だという可能性もあることは予測できていた。
しかし、二匹はなぜか信頼した。信頼したくなるような雰囲気が警戒心を解きほどき、結果としては二匹の心は動かされていた。



ユニは首をさすっていた。その首元には、怪しく光沢する首輪があった。

「気になってしまいますか?」

フィルはユニに話しかけた。

「ん、まぁ・・・コレのせいで今まで散々な生き方してきたし・・・」
「そう、ですか・・・もう少し我慢していただければ、私の住処にある道具をつかって安全に取り外せるので・・・」
「そう、か・・・」

ユニは少し考え込むような形で下を向いてから、フィルに問いかけた。

「あの、さ。」
「はい、なんでしょうか。」
「なんていうか・・・どうしてお前は俺たちにここまでのことをするんだ?」
「えっ・・・?」
「だって、おかしいじゃないか。顔も見たことのない赤の他人・・・他竜っていうのかな・・・?」

自らの発言を訂正すべきかどうかも分からないままでいたユニは、質問をしているつもりが段々苛ついてきた。

「まあ、いい。そうである俺たちを、どうして危険を冒して、しかも人間を殺してまで、あそこから引き離そうとしたんだ?俺たちがまるで奴隷だっていうことを知っていたかのように。なぜだ?」

ユニの口調は、段階を追ってきつい口調になっていった。

「どうしてなんだ。俺たちは誰にも『救ってくれ』なんて言ったことはない。なのに、なぜお前は俺たちを助けたんだ?」

フィルはその回答をするのに少し戸惑った。唐突にユニから飛んできた棘のある口調が、少々響いたようだ。
少し時間が経ち、フィルは落ち着き払って答えた。

「困っている方を助けるのは、人間でも、竜でも、変わらないのですよ。あなた方が困っているように見えたのは、かなり前からのことでした。」

そして、フィルは少し和らいだ表情になって、間を開けた後に言葉を続けた。

「・・・私は、あなた方が人間たちに連れて行かれた現場を見た者の1匹です。」
「そんな・・・まさか。」
「・・・お話を続けてもよろしいですか?」

フィルは、落ち着いた様子で話を続けた。

「現場にいた当時の私は、当然ながら今ほどの力はありませんでした。ですが、当時の私は既に決めていたのです。もし、彼らに出会って、彼らが困っていたのならば、私は彼らを助けたい、と。」
「俺たちが人間に連れ去られようとしていた場面を見ただけで、そんな覚悟をしたのか?」
「その通りです。当時、仔龍を誘拐しては幼少期から奴隷教育を学ばせるという風潮が強かったものでしたからね。きっとそれも影響しているんだと思います。」
「ふうん。」

ユニは期待通りの答えがもらえず、納得がいっていないようだった。

「じゃあ、俺たちはお前のお人よしな心に救われたってことかな。」

軽い皮肉を込めながらも、にっこりと笑顔を見せたユニだった。遠目からその様子を見たチェスカは、不思議と自分も笑顔になっていたことに気付く。張りつめていた空気が少しばかりやわらかくなったからであろうか。

「まあ、大雑把に言えばそんなところです。」

と、お人よしと言われてしまい申し訳なさを感じたフィル。しかし、その心は表情には現れなかった。もちろん、ユニやチェスカにですらその内心を探ることは不可能であった。
このやり取りがあったためか、ユニとフィルの会話がずいぶんと親しい仲であるかのようなものに移っていった。普段は知らない余所者に対してツンとした態度を見せるユニ。しかし、今回も同じように見せかけて、実は例外のようだった。
会話を続けるうちに、三匹の仔龍たちは湖に近づいてきた。

「さて、お二方に少しお願いがあります。」

フィルはいつも通りと言わんばかりの紳士口調で、小走りながらもユニとチェスカに次の行動の指示をした。

「まず、湖に入ります。入ったら、すぐに身体の匂いを落とすように身体を洗ってください。とりあえずはここまでです。・・・さて、湖が近くになってきましたよ。」

湖に入ります。その言葉を聞いた瞬間、ユニとチェスカはその行動の意図を察した。だいぶ前からわかっていたことだが、追っ手は恐らくこちら側の匂いをたどって移動をしているのだということだ。

「・・・それよりも、もっといい方法がある。」
「へ?」

フィルが気づいた時には、既に時遅しというべきなのか。ユニは突然フィルに組み付いたのだ。

「なっ・・・!」

突然組み付かれたフィルは、そのまま体勢を崩しながらユニと一緒に泥水へ倒れこむ。

「兄さん!?」

その様子を目の前で見たチェスカは当然驚いた。
ユニもフィルも泥でまみれている。
倒れこんだ瞬間ユニの組み付きが一瞬だけほどけた隙に身体をうまくくねらせユニから離れたフィルは、ただ一言「なるほど、さすがユニさん」とだけ言いながら立ち上がった。
一方、倒れこんだままのユニも身体を起こす。その顔は、まるでいたずらっ子が悪だくみを考えるときのような顔だ。

「兄さん・・・どういうことなのかしら。」

チェスカは流れについていけてないと悟り、ユニに問いかけた。

「えっと、ほら。アレだ。人間の言葉でいう『いめーじちぇんじ』ってやつだ。」
「泥にまみれている方が匂いを消しやすいから、というわけですね。」

フィルはふざけて答えるユニを差し置いて、ユニの行動の意図を話した。

「そういうことだよ。水で匂いを消すよりは、地面と同じ匂いになって移動した方がバレにくいだろ。」
「そういうことだったのね・・・まさか、雌である私に泥遊びをしろと言いたいの?」

チェスカは嫌そうな顔つきをしてユニとフィルを見つめる。

「えっと・・・まあ、そういうこと?」

ユニは目線をそらしながら言った。

「はあ・・・兄さん。仮にも雌である私にこんなことさせたからには、絶対許さないわよ。」

チェスカはそう言いつつ、しぶしぶ自分の身体に泥を塗っていく。ユニは殺されるのではないかという恐怖に満ちた顔をしている。もちろん追っ手ではなく、目の前にいるチェスカに、だ。

「ほら、どうかしら。」

と、きつめの口調でチェスカが言った。不満そうなのは泥にまみれた顔からでなくても読み取ることができる。

「おお似合うよ、似合ってる。」
「大変お似合いですよ。

と生返事のようにサラッと言ってしまったユニとフィル。アッと言った頃にはすでに遅いと気づいたのだった。当然、彼女に睨まれる。

「アンタたち、覚えておきなさいよ。」

呼称が複数形になったということは、当然フィルも怒りの対象になってしまったということだろう。フィルは自分の言動を後悔するかのように下を向いていた。一方で、ユニは相変わらず反省など無かったかのように話を切り替える。

「じゃあ、そろそろ行こう。次はどっちに向かって逃げようか。」

ユニは何事もなかったかのように言った。

「そうですねもう少し行けば私の拠点があるのでそっちへ向かいますさあこちらへ」

と、棒読みな調子でフィル。早く移動しないとチェスカに本当に殺されてしまうと思ったのだろう。フィルとユニは移動をする体勢になった。
そうね。と不機嫌そうにつぶやいたチェスカも移動体勢に入る。そして、フィルの言う拠点へ移動を再開した。





「まずいな。方角が分からなくなった。」

困惑した表情で男は振り向く。長髪のためか、振り向いた際に髪がなびく。

「なんだと?」

振り向いた先にはもう一人の男。報告を聞いて眉がピクリと動く。この男は身体がガッチリとしているように見受けられる。

「奴ら、こちら側に気付いて匂いを消したに違いねぇです。」
「おいおい、マジかよ。」

先ほどの困惑顔の男の言葉に反応して、もう一人の男。

「おれぁてっきりこのすきっ腹を満たせると思ったのに、どういうこったぁ?」

男は自分の腹に手をあてがいながら言った。その手には鋭い鉤爪があった。自分の腹部を自身の爪で切らないよう、丁寧に触っている。

「だから、食うなと言っているだろう。奴らは生け捕りに・・・なんにしても、追うことができないのだから、それも不可能だがな。」

と不機嫌そうに体つきのいい男が言う。不機嫌そうな表情に交じって、焦りを感じているようにも見える。

「どうしますか」
「どうにもこうにも、とりあえず戻るしかないだろう。これ以上無駄に追いかけるよりは、ボスのご意見を聞く方が良い。」
「んだよ・・・せっかく今日のためにメシを減らしたってぇのによぉ・・・」
「そうぼやくな。帰ったらメシくらい食わせてやる。今は撤退だ。」

体つきのいい男が撤退、と言った瞬間、彼らはたちまちその場からいなくなった。





「着きました。ここです。」
「えっ、これ本当にお前の・・・家?」
「ええ、まあそんな感じです。」
「・・・お前ってお上品な家系生まれとかなのか?」
「いやいや、ここは廃墟だったお屋敷を譲ってもらい、少しばかり手入れしたものです。私はそんな家柄じゃないんですよ。」
「ほぉ・・・」

ユニとフィルは、目的地に着いた途端こんな日常的な会話をしていた。町から近い屋敷に着いた三匹。フィルの告白に驚いたのは、どうやらユニだけのようだった。

「どうでもいいから、とりあえずこの泥だらけの身体をどうにかできないのかしら?」

チェスカは、とにかく今の自分の身体をどうにかしたいようだった。泥だらけで町の近くにいると汚らしいものを見る目線が気になる、泥が乾いてきて身体に引っ付いてしまい毛が乱れる・・・チェスカは、竜族ではあるものの、人間で言う年頃の女の子だ。こういうことはやはり気にしてしまうのだろう。

「す、すみません・・・えっと、とりあえず泥を落としましょうか。」

そう言って、フィルは屋敷の中へユニとチェスカを招き入れるように風呂場へ連れて行った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「・・・」
「あの、チェスカさん・・・?」
「やっぱりこうしてみると、私たちの送っていた生活とは全く違うわね。」

入浴を終えた三匹は、泥をきれいさっぱり落として清潔な状態になっていた。ただ、今まで抱えてきたもの、失った時間やモノ・・・それらに対する思いは、ぬぐいきることはできなかったようだ。

「・・・チェスカさ――」
「家具は高級感あふれる木材に、天井からはシャンデリアもどき。しかし部屋は和風のテーマ。そしてそれらはなぜかしら調和し、一つの作品のように、命を持っているかのように、生きている。」

一度フィルから目線を外し、部屋を歩きだしたチェスカは、くるりと身体を回れ右させた後にもう一度フィルの方へ向く

「この家も生きているのね。貴方は、この家の命を途絶えさせないように世話をしているのね。・・・どおりでお節介というか、お人よしというか・・・」

フィルは少し顔を赤らめてチェスカから目をそらした。

「その様子からしてみれば、本当のようね。そういえば、まだお礼を言ってなかったわね。・・・ありがとう。」

フィルがもう一度チェスカを見たとき、チェスカはフィルの方を向いて深々とお辞儀をしていた。

「俺からもだ。ありがとうな。」

そう言って、ユニも深々とお礼をする。二匹とも、奴隷であったころの悲しい習性が現れているようにも見て取れる程に、深々としたお辞儀だった。

「ど、どういたしまして・・・?」

突然の感謝の言葉に少々驚いたのであろうか。フィルは唖然としてユニとチェスカを交互に見ていた。

「・・・でさ、とりあえずお願いがあるんだけど。」

と、頭を上げたユニが会話を切り出す。

「は、はぁ・・・」
「えっと、その・・・初めてこんな感じのこと言うから、失礼だったら申し訳ないんだけどさ・・・」
「兄さんの言いたいことは大体わかったわ。『どらいやー』がほしいんでしょう?」
「えっと、そうじゃなくて・・・」

と、ユニはそのまま自分のお腹を抱えながら言った。

「とりあえず、ご飯食べさせてくれる・・・かな。」

その言葉を聞いて、チェスカは自分がここしばらく食料を口にしていないことに気付いた。と、同時に、きゅうに自分の腹部から音が鳴る気がしたためか、少し恥ずかしそうにしている。

「もちろんですとも!しばらくはここで過ごす予定でしたし。そういえば、気づいたらもう夕飯時ですね。・・・そうだ。食材の買い足しを手伝ってもらえますか?ちょうど、食物が切れかかっていて・・・」
「それなら俺は・・・」
「じゃあ私は・・・」

彼らに付けられた忌々しい首輪の話は、空腹の前ではただのお飾りのようだった。





町のはずれの近くにある屋敷は、誰もいない真新しい幽霊屋敷だったが、今日は久しぶりににぎやかなものになっていたようだ。
日は落ち始め、空はきれいなオレンジ色をしている。屋敷の近くにある町の市場は、夕方でも賑わっている。客人を招いたわけでもなく、これは何も変わらないいつもの様子だった。
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